岩国市中央図書館では、入口を入ってすぐ左手にある展示ケースを、小作品等の発表の場として貸し出しており、これまでコレクションの紹介から研究の発表まで、様々なテーマでの展示を行っていただいております。
年度も変わりまして慌ただしい日々が続く中、新たな道でスタートをきった方、環境が変わった方、いろいろな方がいらっしゃるかと思います。
当展示ケースも無事、新しい年度を迎えることとなりましたが、年度初めから展示での利用をしていただける方がおられて安心しています。
今年度も当展示ケースでは引き続き、みなさまの想いのこもった作品やコレクションを広めるお手伝いができればと思いますので、改めてよろしくお願いいたします。
そんな訳で2025年度初めての展示は風霜文庫さんによる土笛の展示です!
堂々の展示品紹介の前に、土笛、と一言で言っても、明確にどんなものを指すのか分かる人も少ないと思うので、ちょっと調べてみました。
土笛は粘土を焼き作られた笛のことで、世界最古の楽器の一つであるとされています。
古代の日本でも広く使われた楽器で、弥生時代の土笛は下関の綾羅木郷遺跡で初めて発見されています。
この時代の土笛は日本海側、主に福岡や山口から発見されることが多く、山口県にとってもゆかりの深いものであると言えるのではないかと思います。
今回の風霜文庫さんの展示は、そんな歴史ある土笛がテーマ!
気になってきましたか??
きましたよね!
では早速見ていきましょう!


想像していた土笛とは違う姿に、驚いた方も多いのではないでしょうか?
これが今回の風霜文庫さんの展示、苗族の土笛です!
苗族って?
この土笛はどういうものなの?
みなさん不思議に思うことも多いかと思いますので、ここで今回展示してくださった風霜文庫さんのコメントをご紹介しようと思います。
太古、日本列島へ来た民族の一つに苗族もいたと思われ、漆器・茶・餅・コンニャクがあり、歌垣、妻訪いなども共通している。
イロリを囲んだ暮しもあった。
どこかで日本の文化とつながっている苗族の社会の中で作られてきたものの一つに「土笛」がある。
その造形の面白さを見てほしい。
との事です。
それでは、各作品をより拡大した写真で見てみましょう!


遠目でも十分色鮮やかでしたが、近くで見るとこの土笛たちはこんなに色とりどりで、多彩で多様なんです!
一つ一つ味があって何度見ても飽きません。
それぞれが皆生き物をかたどっているのも興味深いですね。
何か意味があるのでしょうか?


苗族が現在生活を根差している貴州省は、中国の西南部に位置しています。
遥か昔の弥生時代、海を越え日本と交流していた民族の現在。
距離を超え、千年以上もの時を超え、歴史の流れに思いをはせる事ができる機会を与えてくださり、本当にありがたいです。
様々な姿を見せてくれている土笛たちですが、現在に至り徐々に技術が進化していく中で、より精巧に表現する技術や、焼き方など作り方にも様々な進化や変化があったのではないかと思います。
そんな中で、どれだけ現実に近いものを表現するのかだったり、昔の形を再現することにこだわったり、はたまた現代の芸術に触発されて独創的なものを作り上げたり、土笛という題材の中で、たくさんの作家さんが悩み、楽しみながら様々な表現に挑んでみたのではないか。
土笛と苗族の歴史や背景に想いを巡らせると、想像が止まらなくて本当に楽しいです!


また、展示ケース奥では、土笛にあわせて苗族の写真も飾られています。
現在の苗族の様子を見ることができるだけでなく、こういった背景を知ることでより作品を深く味わうことができるので、是非バックに飾らてある写真にも注目してほしいです。


ここまで歴史的背景について主に言及してきましたが、色や形が独創的なので、芸術品として見てもとても面白い展示になっていると思います。
笛の機能を維持するには必ず穴が必要になります。その穴という制限を構造に含みながら、焼き方や彩色・造形に工夫を凝らし様々な表現に挑戦したアート作品たち。
現地で評価されているのはどのような作品なのでしょうか?
また、皆さんはどの作品に魅力を感じましたか?
資料的な価値や、歴史的な意味合いから芸術まで、本当に様々な視点から楽しめる展示となっています!
以上、2025年度初めての展示・風霜文庫さんによる土笛の展示でした!
私の実力不足で紹介の仕方がチープになってしまっているのですが、見方によってまた違った魅力が見えてくる、大変魅力的な展示になっておりますので、是非中央図書館で実物も見ていただけたらと思います。
展示期間は4月いっぱい、4月30日までとなっておりますが、一度見た後家に帰って「あれ、苗族の背景を踏まえてみたらこの造形って……」とか、「土笛で出来る表現の幅を踏まえたうえでこの作品たちを見ると……」とか、考えれば考えるほど、想いを巡らせれば巡らせるほど、何度も足を運んで見に来たくなる展示になっていますので、リピートができるように、早めのご来館をお勧めします。
さて、中央図書館展示ケースでは、皆様からの作品も随時募集しています。過去には創作物やコレクションの展示、研究発表など、様々なジャンルの展示がありました。
あなたの作品を中央図書館に来館された方々に見てもらいませんか? 展示の申込み・お問い合わせは、岩国市中央図書館管理班(31-5048)まで電話、または中央図書館2階事務室へ直接お越しください。